9月5日、15時くらいに寺田氏が上野明美に電話をかけた。
その内容は、「3万円貸してくれ」というものだった。
私は寺田氏の横で、寺田氏がスピーカーで話す上野との会話を聞いていた。
本日付で、60万もお金を渡していたなんて、親思いのいいネズミだ。
次は、私のところに上野から電話が来るだろう、週明けかな?などと、寺田氏と二人で話していた。
週明けどころか、当日、二度目の電話が寺田氏の元にかかってきた。
【以下録音内容を抜粋・加筆・訂正等】
「今、10億もらう予定だった人が…」上野明美は、神妙な口調で話しはじめた。「その人は、10億入ってくるっていうんで、うれしくて、お酒飲みすぎて、駅のホームで…コロっとね。心筋梗塞かなんかでね…」
「じゅ、10億?!」寺田氏だけでなく、私だって驚きますよ。
「その人と連絡つかなくなって。やっと、今月、初めに奥さんと連絡がついて、その人が亡くなったってわかったの。そういう連絡が、今、来たのよ、私のとろこに」
10億受け取るはずだった人=呑杉(のみすぎ)さん(仮名)とする。
呑杉さんの口座に振り込みたいけど、死後、口座は凍結されてしまう。
呑杉さんの奥さんや親族は、書類の名義になっていないので、受け取ることはできない。
呑杉さんが受け取るはずだった10億が宙に浮くことになる。
どうする?どうなる、この10億円。
10億円分の手続き料は、1200万円。
「これで最後だ!ネズミたち、お金を集めてこい!!」
こうして、再び「最後の集金」に、今月も精を出す子ネズミたちであった。
めでたしめでたし。
お金が集まったら、別の誰かが死んで、これって無限ループやん。
10億と聞いて、欲の塊の上野ネズミは居ても立ってもいられない。
親玉サギネズミの大崎が、5億円分の600万はなんとかする。
「残りの5億分、600万円は、みんなでなんとかなりませんか」と親玉に諭されたのだろう。
上野ネズミが60万を振り込んだ途端、次のチーズをすぐにぶら下げるなんて…普通に詐欺のやり方だよ。
前回の余った分、2億円は83歳の人で、熱中症で亡くなった。
今回の10億円分の人は会社経営者で、そのお金が入ったら東証2部に上場する予定だった。ずいぶん話が大きいな、おい。
※もちろん、株をやっている私と寺田氏は、東証1部2部が数年前に廃止され、東証プライム、グロース、スタンダードに変更されたことは知っている。こういった瑣末なことからも、詐欺師が適当なことを言っていることがわかる。やはり、知識は現代の武器である。
本題来た。「寺田さんが、田端さんと会って、話が信用できるなら、100万くらい用意できないかなって思ったの」
待ちに待ったチャンスが到来しそうだ。
田端、もしかしたら、その上の大崎までつながれるかもしれない。
「全然、お金なら大丈夫ですけど」と、相変わらず金など貸す気のない寺田氏は、あっさりと答える。
「細かい話はできないけど、話を聞いてみて、それで判断してもらえたらなって。だって、10億の分はなんとかしないと、どうにもならないんさ。だから、信じてもらいたいんだけど、どうしたら信じてくれる?寺田さんって会う時間ある?」
どうしても金を引っ張りたい上野。
多少強引でも、少々危ない橋を渡ってでも、なんとかしたいようだ。
「ちょっと、忙しいからな。Cさんには3万円分、ドルで振り込んでおいたので」などとどうでもいい話を始める寺田。
そんなことはどうでもいい、心ここにあらずで、ただうなづくだけの上野だった。
「私も、呑杉さんがが死なないうちに、お金を用意出来たらよかったんだけど」
上野は言うが、そんなのは無理なんだよ。
君がお金を用意した後に、事後報告で呑杉さんが死んじゃってるんだから!
田端は、100万くらいは用意する。1億分?なぜ?20万はサービスだってよ!いい世の中になった。
そうすると、残りの枠は、4億円。
手続き料は480万円ということになる。
残りの4億のうち、できるだけ多く私が欲しい、アドレナリンが上野の脳内を満たしていた。
「でも、上野さん、大丈夫なんですかね?」この辺の持っていき方はうまいね、さすがホスト。
「それは大丈夫なのよ」
「でも、私が上野さんとお知り合いになって、6月末にね。その時に月末には返ってくる、それで返ってこなかった。7月には返ってくる、って言われて、返ってこない。8月もそう。上野さんのことは信じてるけど、本当にこれ大丈夫なの?上野さんが心配だよ」
「だって、だって、それはハプニングが起きたから、起きなきゃ大丈夫だったんだけど」
「でも、Cさんが、高田のおばあちゃんが1年くらいやっているって、ボク、聞かされているから」
「そうそうそう、ずっと、ずっと。一連のことだから」
「上野さん、大丈夫なの?これ、騙されてるってことないの?」出たキラーワード。
「それはない。それはない」何を根拠に?「これでやっとなんとかなったわけだから」
「そういう話をずっとされているじゃないですか、田端さんから」
「うん?」
「同じ話を、ずっとされているじゃないですか?」
「同じ話じゃないよ」まぁ、ネズミ脳では、本質が見極められないんだろうな。
「返ってくるよ、って毎回言われて。これって詐欺なんじゃないのですか?」
「う~ん、そう言われちゃうとさ…」妙に色気を出す上野。
「ボクはね、上野さんが心配で、言ってるんですよ。大丈夫かなって思って」
「高田さんから、何年も返ってきてないって話を聞いちゃうと、大丈夫なのかな、って」
と心配性の寺田氏。
だったら、なぜ君は上野に金を貸したがっているんだ!
答え…愛ゆえに。
「そうやって、みんな信じてくれないから、どうしても仲間同士でやるしかないんだよね」
外の人は信じてくれない、頼りになるのは仲間だけ。
こんな風にして、ネットワークの妙な結束が、より強まるのか。
上野と田端は、それなりに会っている。
田端親ネズミと上野子ネズミの良好な関係性である。
どうしてもお金が欲しい上野、寺田氏に田端を紹介するのもやぶさかではないようだ。
「お互い、忙しいからね」と寺田氏。
「ううん、田端さん、仕事がないから忙しくないよ」あっさり会えるんかい!
「Cさんも交えて、会えたらね。話も聞きたいって言ってたからね」
「う~ん…」ちょっと渋り気味の上野だ。誰彼構わず親ネズミに会わせる訳にはいかないのだろう。
上野のことは信じられるけど、上の人のことが、いまいち信用できないと寺田氏。
詐欺とか、犯罪とかじゃないのか?とほのめかす。
「心配心からですよ」心優しいホスト寺田、この手口で何人の女を泣かせてきたことか…。
「一度でも、お金が返ってきてれば信用できますし、事業報告書とか、決算書とかね、そういった具体的な何かがあればね」
「そうだよね」そう言われてしまうと、ぐうの音も出ない上野だった。「お金が集まらないと、ちょっと、また遅れちゃうかもしれないけれど。」
うまいやり方だよ、ほんと。
お金が集まらない → 手続きが完了しないので、翌月に持ち越し
お金が集まる → 誰かが死んで、手続きが完了しないので、翌月に持ち越し
どっちに転んでも、翌月に持ち越すことは、予定通りなのだ。
寺田氏が貸してくれないなら、大崎と田端になんとかしてもらうしかない、しょうがないか、と半分あきらめ気味の上野だった。
今日送った60万円は、仕事で得たお金。
ばあさんが、給料でそんなにもらえるの?
以前は会社のお金を好き勝手使えたが、今は娘が通帳やらなんやらを預かっている。
月光電器から、10日払いで給料はもらっている。
もう他の人から借りられないけど、今回の10億分のいくらかでも用意しないと「同じ仲間としてどうかなって」。やれやれ、ネズミの結束力は、末恐ろしいや。
親玉サギネズミの大崎とは、面識がある程度。
その程度なのに、命がけで、応援するなんて…。
上野の周り(家族)が騒ぐから、応援している大好きな大崎だが、大崎との接点を、あえて持たないようにしている、健気な上野ネズミ。
「でも、大崎さんから、ちゃんとみんなに説明ができれば、みんな納得すると思うんですよ。Cさんだって、上野さんの娘さんだって」ド正論をかます寺田氏。
「そういう世界のことじゃないから。あっちもにこっちにも話をしていいようなことじゃないの」
大崎さんていうのは、何をやっている人なの?
あなたの説明だと、世間に広めてはいけない、っていうことになるよ。
犯罪行為?
隠密(スパイ)行為的な活動をしているの?
「守秘義務があるので、私があんまりベラベラしゃべるのはよくないの。必要なことしかしゃべれないから、必要なこともそんなにしゃべれないから」と言い訳する上野。
守秘義務、という言葉を盾に、具体的なことを探らせない、というのも詐欺師のうまいやり方だ。
「今回入金されなくなったのは、私にも責任に一端があるので、それとなくそれを田端さんにも言われたので」寺田さん、お金貸してください、という訳だ。
上野明美は一貫している。
求めているのはお金。
言っていることは「お金貸してください」。ただそれだけ。
「崖さんっていう人は、その前にお金を出したから。もうないと思うよ。でも、崖さん、7億くらいもらうのかな?」
いや、崖さん、すごっ!
「崖さんも、前に出したから、もう50万くらいしかないよって」
「ペナルティってなんなんですか?」ペナルティという言葉に食いつく寺田氏。
「ペナルティっていうのは、大崎さんが次に仕事をするときの信用問題ってことだよ。書類を作ったのに、その内容が変わってしまうと(ペナルティ)。そんな詳しいことは知らないけど」結局よくわかりもしないことを、必死に信じるネズミがそこにいた。
「毎月、メンバーの方が亡くなるようなことがあれば…」至極自然な疑問をぶつける寺田氏。
「でも、全部配分しちゃえば、大丈夫でしょ」
大丈夫じゃないから、毎月、毎月同じ事を繰り返してるんじゃないの?
「8月の終わりに全部締め切ったみたいよ」
ならば、今まで送った分の2億は今月末に入るという皮算用でいいのか?
上野が今日送った60万円分は、大崎が立て替えている…はず。
ネットワークネズミっていうのは、ほんとに、自分の都合の良いように物事を考える生き物だ。
「ボクの知り合いに大蔵省の人間がいますけど、ちょっと調べてみますか?」ほんと、突拍子のないことを言い出す奴だ。
「だから、そういうふうになっちゃうのが、困るのよ。調べるとか、そういうんじゃないの。調べましょうかって言っても、その人知らないじゃん」
でも、以前はネットで検索すれば出てくるくらいの大物だって、大崎のこと話してたよな。
「そういう仕事がある、っていうのを知っている人もいるし知らない人もいるし、べらべらしゃべるようなことでもないから。それをさ、Cさんに言ってもさ、信じる訳ないじゃん」
このネズミ、なんか、私のことバカにしてる?
悪魔がいるっていうなら、悪魔がいることを証明しろよ。
大崎が優れた人物で、素晴らしい活動をしているなら、それをお前が証明しろ。
「だって、戻って来ないことはないよ。大崎さんだってなんとかするし、田端さんだってなんとかするだろうし」
なにこれ?
なんとかするんだから、なんとかなるんだよって、結局は、ネズミの根性論?
「自慢するわけじゃないけど、下の娘の旦那、〇〇物産に行ってるから。年収1000万以上はもらってるから」
身内に金はあるんだけど、どうにもこうにも、もう引っ張れなくて、悩ましい上野。
上の娘は人材派遣をやっている、ぽいな。
資本金が2000万円必要とか、経営側じゃなければ知らないことだろう。
「お母さんにお金を管理させておくと、全部田端さんのところに行っちゃうから、って通帳を取り上げられちゃって。娘は大変だよ」その通り!
今後、上野明美の入金(給与や年金)は、私たちで管理して、上のネズミに渡らないようにしましょう!
「新たな人に声をかけても、絶対に信じてもらえないんだから、今まで出してくれた人とか、グループの人たちでなんとかしようって、田端さんとも話をして」
う~ん、田端のババアもなかなかのやり手だな。
3万円の話じゃなくて、10億の話をしてるんですよ、10億円。
寺田さん、なんでももっと食いついてこないの!じれ気味の上野明美だった。
「遠回しに上野さんが遅かったから、遠回しに言うんだよ。責任とは言わないけど」女っていうのは、そういう生き物です。「でも、私は、もうどうにもできないからって言ったから」
上野としては、もう大きなお金は用意できない。
でも、もっと欲しい。
だから、万が一寺田氏が食いついてきたらラッキーだ、くらいのようだ。
また、泥沼さんにも声かけるんだろうな。
「牧師さんに12万出してもらったからさ、ほら、お金が入ったらね。献金するわよ」信仰心に篤い上野。
やっぱり、荒川牧師、上野に金を貸していたんだな、罪な牧師だよ。
あなたのせいにするつもりはないけど、あなたのその愚行が、うちのばあさんの背中を一押ししたのは間違いないよ。
コメント
コメントを投稿