来月からアゼルバイジャンの方で忙しくなる寺田氏。
数か月は、我々が今行っている詐欺殲滅作戦から離脱する予定である。
本人の希望もあり、冒険の最終地は、我が家、高田家となり、高田永子と話してもらうことにした。
【以下録音内容を抜粋・加筆・訂正等】
話のとっかかりとして、私は福祉協議会のことを尋ねた。
あなたと上野、二人で昨日、群馬県社会福祉協議会へ行ったのか?
「行った」と素直に認める永子。ただ、何をしに行ったのか、本人はわかっているのだろうか?
高田永子は耳が悪いから、補聴器をつけるのだが、補聴器にしても音量の調節が難しいらしい。
「耳だけじゃなく全部悪いよ」と自虐的になる永子。
昨日、9月23日。
8時過ぎ、上野明美が突然家に現れ、「これから、福祉協議会に行こう」と高田永子に告げた。
借りている金を、今すぐ全部返済することはできない。
しかし、滞納分、20万だけでも返しておかないと、何か嫌なことが起きそう…と、上野は持ち前の嗅覚で悟ったのだろう。
20万の滞納、そして、償還が始まっている分の滞納。
「昨日、上野さんとは車内で話はしましたか?」寺田氏が聞く。
「別に」と、高田永子のそっけない返事。
あなたと上野、どういう関係なの?
知らない婆さんとの話に行き詰まる寺田氏。
私は例のことを永子ばあに尋ねてみた。
「さっき、上野の旦那、来夫さんと話をしたんだけど。お義母さん、上野来夫さんからお金借りてる?」
「うん、そうだね」
「60万。でも、金額は定かではないって言ってたけど、3回にわけて、お義父さんが入院するときに貸したって」
「10万ずつじゃない?」
「30万か」
「そう」
「ただ、お義母さんさ、上野来夫さんに75万渡して、返ってきてないって、言ってたよね?だから、差し引きでいうと、45万、あっちに貸してることになるよね」
「そうだね」
高田永子は、上野来夫からの借金30万円は認めた。
そして、上野に75万渡していると言う。
さぁ、上野来夫は、75万の借金を認めるであろうか?
一応、私は上野に手紙を書いた。
よい返事がもらえればいいのだが、どうだろうか。
電話もなく、急に現れた上野。
よほど私の録音を警戒しているのか?
「寺田さんが上野さんに協力したいっていうんだけど、上野さんは電話に出てくれないんだよね」と私は言った。
「もう必要なくなったからじゃない」と、あっさりと返す永子。
やっぱり、高田永子は事の成り行きを全く理解していない。
今はもう、その渦中にいるのではなく、別の騒動が持ち上がっているのだ。
「お義母さんなんとかさ…」
私は、永子と上野をなんとかつなげたいと一瞬思ったが、それは不可能だろうと悟った。
高田永子は、そこまでの知的生命体ではない。
上野明美が、自ら進んで警察署に行ったのではなく、家族(来夫と上の娘)が前のこともあり、相談に行った、というくらいのことなのか。
上野はまだことを荒立てたり、大げさにしたくないということのようだ。
田嶋のことは半信半疑だが、10月の末までは、待ちたい、という思いが強いのだろう。
それなら、なおさら、上野とコンタクトをとれる人間に接触し、上野との連絡役になってもらわなければならないだろう。
田嶋が上野のことを不審に思えば、案外あっさりと身を引いてしまうかもしれない。
私が一番懸念していることは、田嶋自身「私もオオムラにだまされていた。お金はすべてオオムラという男に渡していたので、私自身もお金はない」と白を切ることだ。
そもそも、オオムラという人間はいるのか?
田嶋光子が作り出していた架空の詐欺師ならば、コナン君だって捕まえることはできない。
「さんざん待ったんだから、あと1か月待てばいい」と強気な発言の永子。
こういう頭の悪い発言、本当に嫌いだよ。
「と、いうのを、先月も言われていませんでした?」寺田氏もバカ相手に黙っていられるタイプではない。
「えっ?」
「そういう風に、あと1か月待てば、お金は戻るからって。先月も先々月も3か月前も、半年前も言われて、言われ続けているんじゃないんですか?」
「そうだね」
「それで最後は連絡が取れなくなると思いますよ、田嶋とは。そこで高田さんも気づくんじゃないんですか?詐欺だったと」
寺田氏のうまいタイトル回収。
詐欺じゃないの!
「お金が戻って来なくても、それなりの生活はできるから」と、うそぶく永子。
生かさず、殺さず、詐欺師はうまくネズミたちをてなづけてる。
ただ、今まで出した分は、永子でもあきらめきれないようだ。
だったら、お前も何か行動しろよ!
寺田氏は、この一連のお金の話を詐欺として認め、詐欺を前提に行動すべきだと高田永子を諭す。
しかし、いまいち永子の心には響いていないようだった。
なぜなら、永子の心のうちは
「詐欺じゃないの」
なのだから。
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