上野来夫とたまたま行き合い、興奮冷めやらぬまま、我々は次の目的地へ。
前橋市にある「いこいのみぎわ教会」である。
前橋市の中心部から、やや北側を走る国道をちょっと入った住宅地の一角だ。
車はない。
チャイムを押しても、声をかけても、誰も出てこない。
まあ、我々の運は、さっき使ってしまった。
次の目的地へと行こう。
前橋いこいのみぎわ教会から、車で20分ほどのところにある群馬県社会福祉協議会。
たいそうご立派な建物だ。
なんのための誰のための協議会なのかはわからないが、多分、この国はこういったものに金を使えるほど裕福な国なのだろう。
受付で、案内してもらい、4階の窓口へ。
名刺を渡し、免許証を提示して、こちらはバカなことを話すが、私は至って真剣であると暗に示す。
「他人が受け取ることは可能なんですか?」
当然、担当の人は理解不能である。
それでいい。
私は、必要最小限の話をし、担当者の意見を求めた。
私としては、社会福祉協議会がなんらかの形で、上野を警察に訴えないものか、と期待しているのだ。
しかし、担当者は、事務的に答えた。
「もう、書類は受理されたものなので、こちらとしては、高田永子さんに返済していただくだけです」
まるきり、絵に描いたようなお役所だけだ。
もちろん、担当者が悪いわけではない。
社会福祉協議会としては、何もしようがないという話だ。
「我々としては、どうすることもできないので、警察の方に相談に行ってもらいたいのですが」というのが、最終の答えのようだ。
まあ、仕方ない。
いずれは上野の件で警察に相談に行く予定だったので、よしとしよう。
12時を回っていたので、近くのベトナム料理屋に入った。
ランチメニューのフォーをすすっていると、電話が鳴った。
番号は、027から始まる群馬県の固定電話。
私が電話に出ると、さっき話をした社会福祉協議会の人だった。
「高田永子さん、昨日、お友達とここに来ています。返済のことで、相談に来ています」と担当者は言った。
友達?
協議会に一緒に来る友達なんかいいるか?
上野だ、上野明美に決まってる。
私は情報提供の礼を言い、電話を切った。
社会福祉協議会は、どうやらこちらの味方のようだ。
二人の老婆が、返済の相談に来た翌日、その息子が詐欺じゃないのか、とやってくる。
老婆たちはこそこそした感じ、息子の方は用意周到、証拠の資料まで用意している。
あなたならどちらを信じるか?
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