“権威”が好きなネズミたち

 



ネズミに限らず、一般の人たちもそうだろうが、特にネズミたちは“権威”が好きで、“権威付け”にめっぽう弱い。

なにせ自分の頭で考えるのが苦手だから、世の中の人間が言っている(評価している)価値基準を重視する。

ネズミたちは頭が弱く、面倒くさがりなので、自分で調べることも、再検証することもなく、話者の言うままに、チーズのように言葉を丸かじりする。

上野がホスト寺田のことを1ミリも疑わず、信じ切っているのがいい例だ。


権威付け詐欺は、昔からよくある詐欺だ。

アラブの石油王の親族だとか、ナイジェリアの王子の一人だとか、日本の皇室の末裔だとか、有力な政治家の一族だとか…。

アラブ、ナイジェリア、日本など、本当に存在するのだから、と知恵の浅いネズミたちは、それだけで信じてしまう。

権威のある人たちなのだから、嘘などつくはずもなく、詐欺などもってのほかである、と足らない脳みそが勝手に答えを出す。

権威詐欺師にしてみれば、ちょろいものだ。

ひっかかりそうにない人は素通りしてくれて、食いついた人は、まちがいなくバカなので、仕事がしやすい。


上野明美も典型的な権威好きネズミだ。

「自分では成し遂げられない大きな仕事。それを命かけて頑張っている人がいる。私はそれを応援したいだけ」

その一心なのだと思う。

事業内容などは、一般の人に言っても理解されない、と上野は言う。

おそらく非合法ではないが、表ざたにできない裏工作で、外国の要人とやり取りをしている、とでも、親玉サギネズミに言われているのだろう。

権威付けの一種として、ネズミが他に好きなものが“外国”という言葉。

外国の仕事=すごい、えらい と短絡的な頭脳が無条件に反射してしまう。

海外の仕事を日常的にこなすホスト寺田に対し、上野は尊敬の眼差しすら向けている。

ラオスやカンボジア、ミャンマーなど簡単に行けない国であるほど、自分の想像を超えていて、ネズミたちはアドレナリンを出す。

トルクメニスタンなら効果絶大だ!


ネズミたちの出(投資)しているお金は、正規のルートでは、(日本政府などが)出せないお金なので、簡単に説明できなし、守秘義務も発生する。

ただ、一連の交渉や作業が終われば、出した分以上の、それこそ何倍もの見返りがある。

「私を信じて、応援してほしい」と親玉ネズミは近しい距離の子ネズミたちに説いて回る。

おおよそ、そんな感じだと想像している。




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