大丈夫、今月中には、お金は入ってくるから

 


上野明美にしても高田永子にしても、常人から見れば奇人である。

しかし、その言行は一貫している。


悪びれるそぶりもなく、何度も何度も金を上のネズミたちに上納している。

後ろめたさも、心苦しさもないのだろうか?

全くないわけではないだろう。

常人だって、生きていれば、少なからず後ろめたいことや心苦しいこともあるのだから。


上野と話をし、上野との録音を書き起こしていると、少しだけ私の見え方が変わった。

今までコインの裏側だけしか見ていなかった。

ネズミたちの見ている、コインの表側を考えてみなければいけない。


基本的に上野も高田も嘘はついていないと思う。

私や寺田氏に比べたら、正直すぎる受け答えである。

なぜなのか?


それは

自分たちは決してだまされているわけではない。そして、自分たちの行っていることは正しくて、正しい行いに対してまっとうな報いが必ずあり、それはすぐそこまできている。

と、確信をもって行動しているからである。


ネズミたちが事あるごとに口にする言葉がある。

「大丈夫、今月中には、お金は入ってくるから」

ネットワークネズミたちのこの金科玉条によって、ネズミたちはせっせとお金を集め、上納している。

「大丈夫、今月中には、お金は入ってくるから」

本当にこの言葉は何度も聞かされた。上野からも高田からも。

こちらサイドからみれば、荒唐無稽のたわごとである。

「先月お金が入ってないのだから、今月入るわけないじゃん」と通常の頭脳ならば考える。

しかし、低能なネズミたちはそうではない。


7月の時点で「今月末までに1000万円戻ってくる」と上野も高田も言った。

7月末までにお金は戻ってきたか?戻ってきてない。

そして、8月になった。

「今月末までに1000万円戻ってくる」と上野も高田も言う。

果たして彼女らは嘘を言っているだろうか?

いや、あなたは頭を使わずに、文字面だけを追ってほしい。

自分もネズミの頭脳になって。


「今月末までに1000万円戻ってくる」

嘘は言っていない、というよりも一種のパラドックスになっているのだ。

今月末までにお金が戻ってくるかどうかわかるのは、来月である。

来月になるということは、もうその時、“今月”は終わっている。

来月になっている時点で、新たな“今月”というのが、もう始まっており、もう、その月が今月になる。

だから、「今月末までに1000万円戻ってくる」が成立してしまうのだ!


どこまで子ネズミたちがそれを信じているのかわからない。

しかし、行動原理にそれはあると思う。

親ネズミがうまく調教しているのかもしれない。


どうして高田永子は妹から12万借りたのか?

それは「今月末までに1000万円戻ってくる」から。


どうして上野明美は、寺田氏が12万円貸してくれたら24万にして返す、と言ったのか?

それは「今月末までに1000万円戻ってくる」から。


どうして上野明美は簡単に借用書を書くのか?

それは「今月末までに1000万円戻ってくる」から。


どうして上野明美は、私からの借金を認めたうえでそれを返さないのか?

それは「今月末までに1000万円戻ってくる」から。


どうして上野明美は働いて借金を返そうとしないのか?

それは「今月末までに1000万円戻ってくる」から。


「大丈夫、今月中には、お金は入ってくるから」という上のネズミからの言葉で、子ネズミたちは安心して集金にいそしむことができるのだ!



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