高田永子との会話に、ほとんど目新しい情報はなかった。
お互いに同じような情報を持っているのが確認できただけだ。
それだけでも良しとしよう。
上野明美は基本的には、嘘偽りない人間だ。
話す内容も人によって、分けたり、違いをつけたりはしないのだろう。
彼女は誠意のある人間性を持ったネズミというわけだ。
もしくは、単に目先のことで頭がいっぱいで、話す内容も持たない、ただのネズミなだけなのかもしれない。
上野の娘、上の娘は地元(モロに家を建てた)にいて、下の娘は東京にいる。
「上の娘は(月光電器とは)違う仕事をしている」と高田永子。
「それは知っている。なんか、人材派遣とか言ってた」私が言うと
「ギンジャケ?」
「?」
高田永子は耳が悪いのだ…良くも悪くも、役に立つ耳だよ、ほんとに。
もう話すことも尽きて、言葉を探す私。
編集でごまかしているが、しばしの沈黙が多々あった。
永子の方から話を振ることはない。
「向こうの物件は、明美さんの名義になってる。ただ売るとなると、周りが騒ぐ?騒ぐっていうか、何か関係している人がいるんだろうね」と永子。
「私が聞いているのは、売りたくても高すぎて売れない、って話だったんだよね」
ここはちょっと話に差異がある。
永子が言うように権利、利害関係が複雑で売れないのか、私が聞いたように高すぎて売れないだけなのか?
抵当権があるのか、固定資産税の未納分があるのか?
一応確認「お義母さんは、大崎さんがあなたたちを騙していない。大崎さんのしていることは、詐欺じゃないって考えているの?」と私が言うと
「だと思うけど」私たちは大崎さんに騙されていない、という前提は崩れていない高田永子。
ここで再度私が強調する。「大崎さん自体が騙されてるんじゃないかな」
単純な理屈。もう最終段階の事務手続きなんだから、みんなで一致協力して、それをやればいいだけの話じゃないの?
私がさんざん説教臭い話をしたあと、永子ばあさんは一言。
「わかんない」
「わかんないよね…」空を見つめる私だった。
「そもそも、いつからやり始めたの?10年くらい前?」私はきいた。
「忘れた…」とあっさりした感じの高田のばあさん。忘れたというより、もう思い出したくもない、といったところか。
「通帳とか残してないの?全部捨てちゃった?」
「捨ててはないと思うけど」
おそらく通帳や書類などの類は捨ててはないと思う。
なんでもとっておく、捨てられない世代なのだ。
ガサ入れをすれば、それなりの情報は出てくると思われる。
「一番最初は75万という金額だった。それは、社長と明美さん、二人でやってたのかな。それが戻ってこなくて、その次に上乗せして返すからって、さらにお金を渡して、それが20年位前になるのかなぁ」感慨深げに20年前のことを振り返る高田永子だった。
さらに続けて「投資みたいな話で、他の人には返ってきたんだよね、75万円。ただ私が出した分だけ返ってこなくて。そこから(お金が)大きくなった。社長が関わらなくなって、こっちの話になったのが、多分、10年位前だよな」永子の頭の中で、10年の時が進んだ。
20年前から10年前までの、この期間、投資や借金の話などはなかった。
75万は上野に預けっぱなしで、10年間、返済はなかった。
75万円に上乗せして、高田永子の詐欺られ人生の第2章が始まった。
おそらく、以前の75万円を取り戻すために、200万出してくれたら、利息もつけて350万円くらい返すよ、とでも言われたのだろう。
う~ん、なんと言うか、つくづくバカとしかいいようがないな。
初めの75万円の投資話。
これは百歩譲って仕方ないと思う。
長い人生、普通に生きていれば、一度くらい詐欺に引っかかることはあるだろう。
でも、他の人は返してもらっているのに、なぜ自分だけ返してもらわなかった、返してもらえなかったのか?
騒ぎ立て、熱量をもって、きちんと回収しようとしたのか?
第二に、なぜ金を返してもらえなかった相手に再投資したのか?
バカなの?相手の言いなりになる依存性が、バカをバカたらしめている。
20年前(2005年)の「75万詐欺」から10年前(2015年)の間、上野明美は他の投資案件やネットワークビジネスをやっていたのだろう。
その中で培った人脈の中に田端照代(や大崎もか)がいたのだ。
いずれにせよ、大崎・田端ラインの詐欺案件は、10年前、2015年に始まった。
初めに200万円渡す。
それを戻すためのお金、10万円、15万円…が必要と、親ネズミたちに言われる。
大きなお金を取り戻すための小口のお金を払い続ける。
ほぼ、私が想像していた範囲内だ。
上野はどうして家屋敷を売って、大崎サギネズミに貢献しようとしなかったのか?
それが不思議でしょうがない。
詐欺研的に考えると、詐欺られ状態のネズミたちから、細く長く絞れるようなスキームにしているのか。
生かさず、殺さず…こわやこわや。
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