寺田氏に、「お金は出すけど、そのお金はCさんから受け取って」と言われた上野明美。
その勢いのまま、彼女は私に電話をしてきた。
【以下録音内容を抜粋・加筆・訂正等】
「あの~今日連絡があって、お盆くらいにはお金が入るそうです」と、上野明美は進捗具合を私に報告した。
実に律儀な人である。
この世界は信用第一、立派な心掛けである。
「寺田さんから、上野さんにお金を渡してくれって言われたんですけど、本当ですか?寺田さん、失礼ですけど、まともな判断で、そう言ったんですか?にわかには信じがたいんだけど…」私はわざとふくみをもたせるように上野に言った。
「でもね、寺田さんから預かっているお金、投資の方にまわしていて、すぐにどうこうできないんだよね」私の言葉を聞き、期待にそぐわず天を仰ぐ上野明美だった。
「寺田さんに、上野さんに、本当にお金を渡してもいいの?と私、しつこく聞いたんですよ。そしたら、軽く、いいよ、って返事だったんだけど、いや~信じられないんだよね」
私がそういうと、上野は自信を得たようだ。
「そうでしょ。私に貸してもいい、って寺田さん、言ってたもの」
私(上野)と寺田さんの間には、もう信頼関係があるんだから、あなたがとやかくいう筋合いはないのよ、とでも言いたげである。
「寺田さんが12万円、今出してくれたら、お盆くらいには入るっていう連絡があったから、おそくても8月中には寺田さんに返せるよね」
普通に進めばお盆前後、万が一手続きに支障があっても、8月末には戻すように動いているから安心して!信用して!としつこく親ネズミから言われているのだろう。
なにせ信用第一の世界なので。
あきれるくらい、やり口は毎月同じである。
寺田さんや私など、当事者以外の第三者に上位のネズミは紹介してはいけない、というような慣習になっているようだ。
いびつなネットワークにおける信頼関係のなせる業であろう。
上野としてみると、お金が返ってくるための事務手続きをするための手数料がかかるためお金が必要なだけで、上の人への不信感とか信頼感とか、寺田さんのそういった気持ちは、今や関係ないし必要ない、と言いたいようだ。
上野明美としては、お金が戻って来たら、その人たちとの関係性も清算したいようだ。
そのためにも頑張って寺田さんからお金を借りたいのである。
「今までお金を渡して、その人がやってくれたのを援助してたの。それがなんとかなって、その人が私たちにお金を渡すための手数料が今必要なの」
その人=最上位のネズミのようだ。
最上位のサギネズミの子ネズミが田端照代(と少なくとももう一人)、田端ネズミの子どもが上野、その子ネズミが高田永子というわけだ。
「寺田さんは投資家だから、金貸しのような下卑たことはしない」と私が話をはぐらかす。
投資だろうが、金貸しだろうが、寺田氏がよろこんでお金を出すことに、なにか違いでもあるの?あなたバカなの?といいたげな上野だ。
上野はバカだから、自分のゆうちょの通帳を田端に渡していた。
あ、そういえば、高田のばあさんも上野に信金のカードを渡していたな。
この世界は、信用第一ですから!
詐欺師は、どうでもいい些末のことで、事の真相をはぐらかすようだ。
例えば、お金の受け渡し。
上野が言っているように、「受け取りはどの口座がいい?それとも現金?口座振り込みなら、三井住友がいいんだけどな、だって、手数料がもったいじゃない」などと、親ネズミは戻すつもりもないお金を子ネズミたちに連想させ、その場を取り繕っている。
子ネズミたちは、戻ってくるはずのないお金が、自分の口座に振り込まれることを夢想する。
口座自体はリアルにあるのだから。
リアルと空想を結びつけ、ひたすら夢想する子ネズミたち。
一言でいえば、バカなのである。
「私が田端さんに振り込むときは、田端さんの口座に振り込んでいるから。全部記録は残っているよ」
「こないだは、自分の通帳を田端さんに預けてるっていったけど…」そう言う上野の説明を聞きながら、私はいささかひやりとした。
私と上野はそんな会話をしていない。
「ゆうちょの通帳を預けちゃって、自分の口座なのに振込手数料が770円もかかっちゃったよ」という会話を、上野としたのは寺田氏である。
(上野がバカで助かった!)
上野名義の通帳を預かって、上野に振り込んでもらい、田端がそれを引き出す…。
完璧な手口じゃない?
「金貸し」という言葉にナーバスになる上野。
過去に嫌なことでもあったのだろうか?
「寺田さんとも今後、別のことでね、ビジネスパートナーとしてやっていくかもしれないから」やたらと関係性を口にする上野。「私を信じてもらえれば」
「(寺田さんが)先月、お金が返ってくるといったのに、高田さんのところにも上野さんのところにも、まだお金が戻ってきていない。それが不安だ、みたいなことは言ったよ」と上野。
普通の感覚なら、この会話で終わりでしょう。
だって、嘘ついてるじゃん!
潔く認めているから、なんか上野が正しいのかな、と錯覚しそうになり…ません!
でも、この断言力はバカには通用するのだろう。
「だめならだめで、私も別をあたらなくちゃならないから」寺田氏から預かっている10万円を出し渋る私に対して、上野は振込自体ではなく、振り込むよ、という約束がまずほしいようだ。
なにせ、信用第一の世界なのだから。
「振り込むと言って振り込まないと、周りに迷惑をかけちゃうからさ」
仲間意識を持たせるマインドコントロールなのか?
それとも、誰かが約束を反故にしたから、今回の入金はダメになってしまった、というような言い訳のための伏線なのか?
上野明美「生命保険なんて入れない」。
まぁ、そんな金があったら、親ネズミに上納するだろう。
「私が死んだら、私にお金が入らなくて、みんなにも返せなくなっちゃうから、死ぬわけにはいかない」
上野明美のこの正義感たるや!
ネズミながらあっぱれ!
上野が死んだら、上野の子ネズミたちにはお金は戻ってこない。
上野曰く「私の名前で登録してるんだから」
住民票・通帳のコピー(もしくは現物)・印鑑証明…それらのものを親ネズミ預けているという上野。
それらのものを何に使うのかは不明だ。
しかし、人間界におけるそれらの重要物を渡しているという事実、これはバカなネズミにとって「今やっていることは、それだけ重要なことで、決して軽いことではない」と思わせる効果としては抜群だ。
「泥沼さんといって、東京の友達が、やっぱり出してくれたの。2000万くらい」私との信頼関係もほどよく築けたとみえて、上野のばあさんは、よくもまぁベラベラしゃべる、しゃべる。「それは信頼関係だからさ。出してくれたよ」
今回2000万円戻ってくる、という話だが、「手続き料」の12万円は、泥沼さんで、もう一人は高田のばあさんのようだ。
「事がなるように、やってくれている人の活動費だとか、援助だとかなんだけども」
これは今回の12万ではなく、今まで高田のばあさんが出したお金のことを言っているようだ。
「私たちがもっとお金があれば、こんなに時間がかからなかったんだけど、その人が、貧乏人を誘ったから、貧乏人を仲間に入れたから、こんなに時間がかかっちゃてるの」
さらりと他人のせいにする上野。
こういう他責思考じゃないと、頭の中の思考回路のつじつまが合わなくなるのだろう。
「会社のお金も全部つぎ込んだし。命かけてやってるの」本気度は相当のものだ。
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