早朝6時から上野と話した私は、昼くらいに、寺田氏と口裏合わせの会議をした。
多分、その後に上野が寺田氏に電話するだろう。
もう少し、あと少し、上野ネズミを捕獲するまで、残り12日。
【以下録音内容を抜粋・加筆・訂正等】
人を騙すのが、本当に楽しそうだな、寺田氏。
田端を引っ張り出したいのだが、せっかく用意した覚書を上野が使ってくれる様子はない。
「うっ、録音ね。寺田さんに電話してもなかなか通じないでしょ?寺田さんが本当に私に貸してくれる気があるかどうかわからないのにさ。田端さんに待ってって言えないでしょ?」
「さっき、覚書書いてもらったよ」
※この会話において、初めの「うっ、録音ね」が、やはり一番のポイントだった。
おそらく、上野は今まで自分に夢中になりすぎていて、お節介なアイフォンの「録音を始めます」的なアナウンスを聞き逃していた。
しかし、ここにきて、何か違和感を覚えたのであろう。
うまくいきすぎている。
あれほど反対していたCがなぜ金を出そうとしているのか?
しかも、仲間の寺田からも金を引っ張ろうとしている。
上野の中に、漫然とした不信感が漂っていた。
「100万?ほんとに?ほんとに?」
「なんで」さらりと言う私。「だって、そうするって言ったじゃない。寺田は俺が説得するよって言ったじゃない」
「言ってくれたけれど、私、ほんとかと思わないからさ」
朝、10時、昼に連絡して、やっと寺田氏を説得したのだ。その努力は認めてほしい。
「今は、出張中なんで、明日、事務所でプリントアウトして、渡すから」
「それじゃ、私、お昼にモモちゃんと食事するから、11時ころ取りに行くよ」
「いや、上野さんがモモちゃんとご飯食べてからでいいよ」
「ほんと、すごいCさん」と急にほめる上野。「よく、寺田さんから100万のOK出せたね」
上野は人にお金を出させる苦労を、人一倍わかっているのだろう。すごい、すごいとうるさいよ、照れるな~。
「だって、10年来の付き合いだからさ」
「いや、ほんとすごい、私見直した」
見直したって誉め言葉?
「だから、私、言ったんだよ。高田さんの知り合いの人がさ、お金が入るから、それを多分借りられて、25日くらいには渡せますよって。そしたら、田端さん、話してみるよって言った」
※振り返ってみると、正直者の上野は事細かに田端に言いすぎている感がある。
高田の息子は、大反対しているのに、その知り合いがおいそれと金を出したがるのだろうか?
なみの詐欺師でも、ちょっと警戒するだろう。
「もしもし、お世話様です」最後の関門、寺田の確約がどうしてもほしい上野は低姿勢である。「Cさんと話をしたんだけど、本当に大丈夫なんですか?いいんですか?」
「あぁ、100万円ですよね、いいですよ」さらりと言ってのける寺田氏。
「私、朝、24日か25なら大丈夫ですよ、って話を(田端に)したんですよ。それまで待ってくれれば、ていう条件だけど、多分、待ってくれると思うんだ。17日までって言われたんだけど」
担保物件はあるので、安心してお貸しください、と言いたい上野。
成功報酬はこんな感じね。
完全に自宅工場の仕事をやめたから、不動産売却云々の話になっているようだ。
「払います」って言っているのに、払えないのはまずい。
それでは「払います」と言っているのに、「もういらない」と親ネズミに言われたら、子ネズミたちはどう考えればいいのだろうか?
そうか、これでサイクルが止まるのか。
「ありがとうございます。全然わからない人を信用してもらってね」
哀れなネズミちゃん、あなたの笑顔のカウントダウンは始まってますよ。
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