2025年9月13日 城田さとこの場合 驚愕

※これはフィクションです※

時計の針は23時を少し回っていた。

明日は日曜日、子供たちは学校が休みだ。

少しは寝坊ができる、と城田さとこは、ソファーでぼんやりと考えていた。

もう少し撮りためたテレビドラマでも見ようか、それとももう寝ようか、ソファーで大きく伸びした時、妹のともかからLINEが来た。

「お姉ちゃんどうしよう」

「どうしたの?」と、さとこは返した。

「お母さんがやばいかも」

妹のその言葉を見て、さとこは背筋が凍る思いをした。

多分、母はまだ終わってなかったのだろう、例の投資詐欺…。

母も父も、もうやっていないと何度も言ったが、そんな事は信じられるわけなかった。

今までだってそうだったのだから。

やめるやめると言って、やめてなかったのだから。

これで最後だから、という言葉を、母から何度聞いたことだろう。

「何年あの人に苦しめられればいいの?」さとこは、がっくりと肩を落とす。

これから先何年あの人に苦しめられればいいの?

「クソがっ」思わず出した自分の大きな声に、自分でも驚いた。


城田さとこは、自分の体を確かめるかのように、自分の身をぎゅっと抱きしめた。

1分間は固まっていただろう。

いや、もっと長かったかもしれない。

さとこを意を決し、妹に電話をした。

妹のともかは、今まで聞いたことないような歌うような震える声で、嗚咽混じりに話し始めた。

不審なDM、そして、かぶおぢさんと名乗る、不審な男について、口の中に残った吐しゃ物のカスを吐き捨てるように話した。

一通り話を終えると、妹のともかは、「お姉ちゃん、どうしよう、どうしよう」と、そればかりを歌うように繰り返した。

「とりあえずもう寝なさい」さとこは、極力感情を抑えて、妹にそう伝え、おやすみと言った。

電話の長話を聞きつけ、上の階にいたさとこの旦那が階下に降りてきた。

そして、鬼の形相でにらみつけるさとこと目が合い、城田は思わずギョッとした。

声をかけようかどうか迷ってる場合ではない。

「どうかしたのか?」城田はさとこに声をかけた。

「お母さんのこと。お母さんのことで、大変なことになったかもしれない」

「なんだって?」

「お母さんがネットでさらされてる」

「…」言葉を失う城田。

「ある人が、お母さんのことを悪質債務者として動画をアップロードしてるの」

「確認したの」

「少しだけね」

さとこはうんざりしながら、旦那にスマホを手渡した。

城田は確かに義母が写っている動画を見て、それ以上見るのをやめた。




「なんてことしてくれるんだ!」

城田のその言葉は、もちろん、かぶおぢさんか、上野明美に向かっての言葉だ。

しかし、夫のその言葉は、さとこの胸に深く突き刺さった。

「本当になんてことをしてくれたんだ…」

城田はその言葉を残し、自室に戻るのだった。



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