「ダメだよね?」上野明美は唐突に切り出した。
何がどうダメなのかは、皆わかっているだろう。
この人は金を借りたい人、私は金を貸したくない人。
【以下録音内容を抜粋・加筆・訂正等】
昨日、私はFXでやらかしてしまい、誰とも話したくなかった。
だから寺田氏からの電話も出なかった、という設定。
「ごめんね、10万くらいでもいいんだけど」どうしても今週中に金が欲しい上野は必死である。
「今日ね、寺田さんに、前回の分も取り戻せるように、1500ドル振り込んでもらうことになってるんだよね」
「え、寺田さん、振り込んでくれるん?」
さすがの上野も寺田バカなの?と思っているはずだ。
「上野さんが、話をして、寺田から金を引っ張ってくれたんじゃないの?」
「私、だって、75万借りたいって言ったんだよ。ダメならダメでいいの。でも、その引き取り手を今探しているから、はっきりとした答えが欲しいの」
この辺から話がどうにもかみ合わない。
私としては、FXの情報商材を買ったので、お金はなんとかなる、でも今週中ていうのは、換金の都合で難しい。
上野は上野で、今週中にお金が欲しい、10万でもいいからほしい、といった具合だ。
「3万円の情報商材(マツシマ・スパー・メソッド)を買ったから、70万くらいなら絶対大丈夫だって」と胸を張って言う私。「木曜日の夜に、もう一勝負して、その時は必ず勝つから、俺を信じて」
さて、この私の勝負どうなるのだろうか?みなさんはどう思いますか?
上野はとにかく心配だ。
FXは難しいのだ。
素人がやって、どうなるものではない、とFXにはうるさい上野は思っている。
「でも、金曜日に結果がわかったんじゃ遅いんだ。金曜日に振り込まないと」
そんなことは百も承知だ。
だから、引き伸ばしているのだ。
「寺田さんに電話したんだけど、ピッて鳴って切れちゃうんだ。私着信拒否されてるんじゃないかなって思って」
正解!その通りです!
「いや~、そんなことないと思うけどね」
「じゃ、寺田さんがCさんに預けたってことだ」半分合点がいかない上野。「そして、それを運用して、利益を私に渡すと、こういう訳ね」
「寺田さんがそういうことで俺に振り込んだかどうかは、知らないけど。俺がFXで増やすことは確実だから。そのお金を回すことはできるよね、ってこと」これってフラグ?
寺田氏が送った1500ドルは、上野があと20万でもいいの、30万に足せば50万になるから、の1500ドルだったわけだ。
しかし、私はもちろん上野に渡すことなく、明晩、FXで…。
「上野さんが20万じゃなくて、70万欲しいっていうなら、増やしてあげるよ」
「70万あれば、ちょうど100万になるから。これが限界です。あとはお願いしますって言えるじゃない?」
「大丈夫。天才FXトレーダーの商材だから。70万どころか100万くらいになってると思う」
「ほんとかいな?」ワシもそう思う。
「だって、マツシマさんが俺を信じてくれって、3万円で売ってくれたから」
「だからさ、金曜日の朝にさ、ダメならダメってわかればさ。そうすれば大崎さんが動いて、なんとかしてくれるからさ。だから、ほんと、お願いしますね」
「大丈夫だって」
「だって、私、電話がつながらないから、心臓が止まりそうになって。自分のね、分担があるから、ごめんねって投げ出せばいいんだろうけど。私、そういう性格じゃないから。だから、ここまで来ちゃったんだよ。投げ出せる性格なら、こんなに奥まで泥沼に足を突っ込まなかったんだけどさ」
少しは後悔しているってことなのかい?ネズミちゃんよ。
「わかる高田さん、なんとかしなくちゃ、なんとかしなくちゃっていう思いがさ。洗脳じゃないけど」
はい、自ら「洗脳」頂きました!
「だから100万になればいいんだよ」
「急ぎじゃなければ、20日くらいに寺田のところにけっこう大きい額が入ってくるんだよ」
「ああ、そう言ってた」
「だから、20日以降の24日とか25日とかの方がいいんだよ、確実に日本円で入ってくるからさ」
「いくらくらい?」
私の説明:100万はかたい。おそらく200~300万。いつも20日にまとまった金が入ってくるので、寺田は3.4日考えて余った現金の投資先を割り振る、株や金などの資産に変える。だから、私はその頃合いを見計らって、寺田に連絡し、金を引っ張っている。
「でも、25日だとダメなんだよなって言ったんさ」
う~ん、ダメか、と私は思わず天を仰いでいた。
「そんなに待てるかなぁ」
「それは上の人に聞いてみてよ」24日に貸したい私も必死である。「もう今月末は入ってこないものと思って、確実に来月に入るようにしようよ」
「そう、ここまで来て、こんなゴタゴタしてるからね」
「だから、待ってもらってさ」
「だけど、寺田さんが本当に貸してくれるかだよ。待ってもらって、貸してもらえなかったら、私、大変」
「だから、寺田と会うなりなんなりして、寺田からの信用をもっと得ればさ」
「でも、貸すって言って貸さなかったら、それこそペナルティだよ。みんなに迷惑かけちゃう」
なんのペナルティだよ!
「上野さんのできることは、寺田を説得することだけしょ?」
「寺田さんさ、いつ電話すればいいの?」
あなた寺田氏に着拒されてるからね。
「夜、昨日さ、21時に電話したら、リーンって鳴って切れちゃっうんだよ。それってさ、私からの着信を拒否してるってことじゃないの?」
「いやいやいや、女だよそれ。上野さんからの電話だけじゃなくて、かかってきた電話を拒否してるんだよ」
「それならいいけどさ。私はさ、自分ちの家、それを寺田さんに担保でさ、それでどうですかって言ってるの。土地の評価証明を送るから住所メールしてって言ったのに、メールも来ないんだよ」
「そうなんだ」やれやれ、どうしたもんだろうか。
「メールも来ないから、寺田さんが70万貸すっていうのは、それは嘘だったのかなって」
「70万?だから、70万なんてお金、日本円で持ってないって」
「うん、そう言ってた」
「だから、現金がないんだからお金は用意することなんかできないでしょ?今週中に」
「今週中に用意できないんだ」
えっ?人の話聞いてる?ネズミに言っても無駄か。
「だから、本当に現金を用意するとしたら、車売ったり、金を売ったりして、現金化しなくちゃないよ、本当の金持ちは」
「だって、ドルを円に換えればいいじゃん」あなたが正しい!そうすればいいだけのこと。
「日本にいないからじゃないの?」苦し紛れの私。
「いや、いるみたいよ」
「じゃ、ドルもないのかもね、なんだかんだで女に使っちゃってるから、あいつも」
「女がいる訳?」
「いるでしょ、あんな金持ちなんだから。年上の女が好きなんだって」
暗に寺田氏はあなたのことを満更でもないようですよ、とほのめかしているのに、ばあさんこっちの話を聞いてくれない。
「じゃあさ、20万はなんとかならない?最低50万にしてやればいいんだから」
この人は本当に人の話を聞いているのか?現金はないって何度も言ってるやん。
話がかみ合わない。
よくよく聞いていくと、上野は、私が預かっている高田永子の口座から20万用立ててくれって言いたかったようだ。
「最低ダメでもさ、20万は貸してもらいたいの。そうすれば50万になるでしょ?」
「大丈夫だって、信じてください」
「本当に?」と繰り返す上野。「でも、私もそれを信じるしかないもんね」
「大丈夫だけど、万が一ダメだったら、それは20日まで待ってもらうしかないよ。20日くらいに寺田に金が入ってくるから、そのタイミングで20万とか30万とか引っ張てるんだよね。あいつバカだからさ、借用書も何もないのにさ、じゃ、お願いしますって振り込んでくれてさ。借用書も何もないんだから、ただ寺田からお金をもらっているだけ、ただそれだけ。ああいうバカからは、どんどん金を引っ張ればいいんだよ」
「そうなんだ」上野は無意識に自分の胸に手おいていた。なんだか、とても心臓が痛かった。
「だって、バカなんだもん。借用書も何も書かないんだよ、借用書なんかいらないのかしらないけど、お願いしますねってただ渡してくるんだよ、バカでしょ?これって」
「うん、そうね…バカだよね」ここサイコー!「私も同じようなところがあるかも…」
当たり前だ。寺田のことではなく、お前のことを言ってるのだから、あと高田のばあさんね。
「だからさ、寺田さんと上野さんは似た者同士で応援したがってるんじゃない?」
「う、うっん…だから、高田さんを信じたんじゃない?」明らかに言葉に詰まっている上野だった。「私が田端さんを信じてるのと一緒だよ」
「まあいいや」
「でも、高田さん、心底悪者じゃないんでしょ?」
「おれはだましてるつもりはない。本当に増やしたいと思ってやっているから」
「だから、田端さんだってそうだよ」
FXにはうるさいよ、上野さんは。
「寺田さんが女といるなら、私も安心だよ。寺田さんが貸すのが嫌で着信拒否してると困るからさ」
話が長いのが嫌なだけ。
いくら何を言われても送られても、今週中は現金が用意できないって、何度言わせるのかね?このばあは。
「上野さんがいくら誠意をみせても、寺田さんに現金がないんだから、どうすることもできないじゃん。上野さんがやってることは、出せない寺田さんに恥をかかせているのと一緒だよ」
「じゃ、結局は20日にならないとないってことだ、寺田さんも」そう何度も言ってるじゃん!
そう、上野さん、あなたがすべきことは、寺田氏から24日に必ずお金を受け取れるという確約を得ること、そして、上のネズミたちに支払期日を25日まで待ってもらうということだ。
そして、もうひとつ、明日の私のFXが成功することを祈ることのみである…。
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