少し前にネットフリックスで流行った「地面師たち」の原作の種本である。
これを読むにつけ、詐欺師たちの狡猾さや巧みさ、だけでなく、そこから浮かび上がる「詐欺罪」の成立の難しさを、否が応でも考えさせられる。
地面師詐欺において、詐欺罪で犯人を捕らえるのは、本当に難しい。
詐欺の首謀者が実行犯とは限らない、というより、首謀者はできるだけ表に出ないように細工を施す。
「だます」という行為を行う実行犯的な役割は、別の人間になりすまさせる。
実行犯罪の矢面に立つのは、ほんとに安い報酬で釣られたなりすまし役だ。
これは、他の詐欺でも同じで、振り込み詐欺の受け子にあたる。
捕まる可能性が高いのは、常に末端であり、首謀者は捕まるリスクを低減させている。
しかも、地面師詐欺においては、地主になりすます訳で、高齢の人物になりすますケースが多い。
そのため、なりすまし役もそれなりの高齢者であり、認知機能がかなり低下していることが多々ある。
したがって、なりすまし役を捕らえたとしても、覚えていない、わからない、と本当のことを言われ、警察としてもお手上げ状態になってしまうケースが多いようだ。
律儀に日記を書いているようななりすまし役は、あまりいない。
なりすまし役が、詐欺の最前線であるので、その後ろの者達は、「私は知らなかった」や「私もだまされた」という言い逃れができるケースも出てくる。
共犯という証拠がなければ、「私もだまされた」という人の証言が嘘だと立証するのは難しい。
田端照代と上野明美においても、同様のことが言える。
狡猾な田端は上野に次のように説明する可能性は多々ある。
「上野さんから預かったお金は、すべて大崎さんに渡している、私がもらったわけじゃない」
「もちろん、私が自分自身で出したお金もある」
「大崎さんと連絡がつかなくなって困っているのは、私も同じ、私も被害者なの」
もしも、田端が、「私も大崎にだまされていた」と言い逃れしたら…その時は、どうすることもできないかもしれない。
どうする上野明美?
コメント
コメントを投稿